清春くん

初めて買ったCDアルバムは、小学生のときに買ったKANの『野球選手が夢だった。』でした。

「愛は勝つ」が収録されているアルバムで、今でもどの曲も覚えているくらい、繰り返し聴いていました。

このまま音楽のアイデンティティはその路線で築かれていくのかと思いきや。

14歳のとき。塾に行く前にいつも観ていた、夕方のローカル番組。

それが、のちの人生を変えることに…

なんていうと少し大袈裟ですが、当時は携帯もSNSもなく、テレビや雑誌からしか情報を得ることができない時代でした。

ある日、その番組に黒夢というヴィジュアル系バンドが出演していました。デビューシングルの宣伝のために、化粧をした男性3人が黒い衣装を着て、チェーンなどのアクセサリーをつけて演奏し、歌っていたのです。

「なんだこれ。」

観たことのないバンドに、目が釘付けになりました。ボーカルの清春くんに一目惚れ。塾に行って「観た?」「観た観た!」と、友人と大興奮。

その後、同じ番組にTHE YELLOW MONKEYが出演。セカンドシングルの宣伝で流れたMVに、鼻血が出るのではないかと思うほどの衝撃を受け、ボーカルの吉井さんにも一目惚れ。

1994年、私は忙しかったのです。

さらに、JUDY AND MARYのYUKIちゃんにも憧れました。黒夢の清春くんとYUKIちゃんが出ている雑誌を買い集めてスクラップし、着ている衣装のブランドを調べ、どこで買えるのかも探し、時には出版社に電話もしていました。

ふたりが着ていたヒステリックグラマー、ヴィヴィアン・ウエストウッド、クリストファー・ネメス…。あと、YUKIちゃんがギンガムチェックのスカート(ワンピースだったかも)を着ていて、それがきっかけでコムデギャルソンも好きになりました。

親にねだり、お年玉をかき集め、勇気を出してお店へ行く。けれど、買えないことの方が多かった。だからスクラップを眺めては、自分がそれを着ていることを想像していました。

YUKIちゃんが雑誌で連載していた『YUKIの果てしないたわごと』も、夢中で読んでいました。落書きしたポラロイド写真、手書きの文字、イラスト。すべてが素敵で、全部真似したかった。あのセンスは本当にすごかった。ギュンギュンに書き込まれたページは、読むたびに新しい発見がある気がして、何度も何度も読み返しました。あの文字になりたかったけれど、週2回通った書道教室の力は強く、同じ字は書けなかった。

こうなりたい、真似したい。

そんな存在を、きっと「ミューズ」と呼ぶのかな。

当時は、今のように簡単に情報が得られなかったからこそ、想像して、自分の中で膨らませて、真似をして、そんなふうにしていた気がします。

今はYouTubeで、90年代の黒夢のライブ映像を気軽に観ることができて、清春くんのファッションを改めて楽しんでいます。ピタピタのジャケットと細身パンツのセットアップに、ラバーソール。彼はジャケットを脱ぎがちで、ほぼ上裸になっていることも多い。指にはたくさんのゴツいリング。あれがマイクに当たってカチャカチャ鳴るんです。

音がきちんと、歌詞がきちんと聴こえることが黒夢の良さではない。カッコよければ、それでいいのです。

やっぱり、好きだ。

こうして振り返ると、「好き」の軸は、当時から変わっていないのだなと確認できます。

梅雨でお出かけ気分になれないときに、こういう自分のルーツを振り返ってみるのも、いいかもしれません。

(ちなみに、高校の卒業アルバムの撮影前。「一生残る、これはキメたい!」と、美容院に清春くんの切り抜きを持って行き、お願いしたウルフカット。卒業アルバムには、清春くんにはなれなかったけれど、大満足で笑っている私が載っています。)

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