つつむ

Dhalから徒歩10分ほどのところにあるマンションが、外壁工事のため黒いシートでぐるりと覆われています。
風が吹くと、そのシートが大きく揺れて、まるでマンションが鼓動しているように見えてドキッとします。
そこそこ大きな建物なのですが、黒いシートに包まれていることで圧が増し、周囲の街並みもなんだか違って見えるから不思議です。
近くの鶏料理屋さんの場所すら一瞬わからなくなりました。

さて、Dhalの2025年春夏では「MATSURI」というシリーズを展開しています。
このシリーズでは、テキスタイルデザイナー・粟辻博さんによる“MATSURI”という生地を使用しています。
先日、粟辻さんの企画展の図録を読んでいたところ、「粟辻さんの目的は、すべてのものや空間に色彩やパターンを与えることにあったのではないか」とあり、深くうなずきました。

カーテンやクッションカバーなど、インテリアファブリックとして空間そのものを彩っていた“MATSURI”。
今回それが服となり、人を包み、さらにその人の動きによって空間をもデザインしていく。
電車に乗れば車内を、喫茶店でコーヒーを飲めば店内を。
そんなふうにして空間に影響を与えているのだ、と気づいてからは、MATSURIを着るたびにその“余波”を想像して楽しんでいます。

図録には「粟辻さんのデザインは、空間を包み、ものを包むデザインである。とりわけ、何かに転化されたときに思いがけない美しさが生まれる」ともありました。
Dhalの服として形を変え、人を包んだときに生まれるあの美しさに、改めて納得したのです。

そういえば高校時代、創立90周年を記念して、先輩たちが校舎を赤い布でぐるりと包み、大きなリボンにしたことがありました。
そのインパクトはいまでも鮮明に覚えています。
あのときの布もまた、空間を変えていたのだなぁと、今になって思います。

黒いシートに包まれたマンションを見て、「でっかい布みたいだな」と感じたことから始まった、布と空間の想像でした。

staff A
@asako_dhal