年齢を重ねると考え方の幅がどんどん狭くなるから、若いうちに自分の壁を壊しておいた方がいいよ。いろんな人と話して、その人たちのことを知って、たくさんの価値観に触れておくと、歳を重ねてもやわらかくいられるから。

MさんとTさんがそう話しているのを、頭の中に必死に書き留めた。年齢を重ねて変わっていくことはたくさんあると思う。食べ物の好み、似合う色、犬派猫派。とりわけ強く感じるのは月日が流れる時間の早さだ。毎年12月になると、もう今年も残りわずかなのかと驚いてしまう。やっと2024年に慣れてきたのに、もう3週間後には2025年…しばらくは書き間違いに気をつけなくては。「ボーッと生きてんじゃねーよ!」でお馴染みのNHK某番組では、大人になるとときめきが少なくなるから月日が流れるのが早く感じるのだとか。子どもの頃は目に映るすべてが新鮮で、何をするのもどこへ行くにもわくわくドキドキしていたが、その経験が積み重なると少しずつときめきの閾値は高くなってくる。ときめきに鈍くなってしまうのだ。それは服でも同じことだと感じる。

ここ5年ほどは手に取る服の色味がすっかり決まりきっていて、クローゼットの中身は白、黒、グレーがほとんど。ときどきブラウン、ごく稀にブルーといった色編成をしている。柄物もなく、衣替えをしても素材が変わるぐらいで色の変化はほとんどない。これが自分だと思っていたのだが、ある時期まったく服を選べなくなった。毎朝の身支度で、その日何を着たいのかが分からないのだ。とはいえ家を出る時間は決まっているので、パッと選んで着るのだが、なんだかなぁともやもやする日が長く続いた。そんな中で秋に大阪で開催されたキムホノさんの展示に行った際、ビビビとくる服に出会った。展示に合わせて作られた、キムさんの横顔がプリントされたTシャツ。これまで柄物はおろか、プリントTもまったく着たことがなかったのだが、このTシャツは写真の空気感に惹かれて購入した。自分の中では挑戦だった。どう着たらかっこいいのだろう。あれと合わせたらどうなるだろう。この服を着てどこへ行こう。一枚の服で、たくさんのことを考える。想像力を膨らませて、これまでの自分から一歩抜け出そうとする。その時間がとても楽しかったのだ。

小さな一歩ではあるが、この一歩が自分の壁を壊すきっかけになってくれたと感じる。まだまだ壁は厚くて、ちょこっとヒビが入ったぐらいだけれども。半年後、一年後の自分がどう変わるか楽しみだ。2025年は壁を壊すことを目標に。まずはウォールマリアから。