5月12日 AM

いつも朝方に猫に起こされる。時間はだいたい4時とか5時。今朝は寝ている私の足を猫が前足でちょん、と触ってきた。がぶがぶ甘噛みして私を起こすことが多いのに今日は優しい。起き上がってご飯をあげる。いつもなら、そのまま朝寝をはじめる(それも家でいちばん良い椅子の上で!)猫だけれど、今日は何か違うと言った様子で部屋をうろうろしている。まどろんでいる人間の足元に座って、こちらを見つめている。
 
何か訴えているのかと思ったら、そうでもないらしく、目がとろんとしてきている。冬場に猫が気に入っていた毛布を差し出すと、ほどなくしてその上に乗り、ふみふみをはじめる。寒い季節は毎日見ていた光景を、久しぶりに見ることが出来た私は静かに歓喜して、そのまま猫と二度寝をする。うっすら聞こえる猫のゴロゴロが心地よい。
 
ようやく起き出したころ、猫は毛布が暑かったのか、フローリングの上で体を冷やしている。手足が少し伸びていて、去年の夏を思い出した。夏になると伸ばせるだけ身体を伸ばして涼をとっているあの姿。あと2か月もすれば、また自由を奪われるような暑い日が来ることを思い出した。毎年夏がどれくらい暑かったのか、冬がどれくらい寒かったのか忘れてしまう。
 
私は猫をお手本にしている。彼は、常に自分が快適であることを優先しているように見える。例えばいくらこちらが傍に居て欲しい時気が向かなければ離れていくし、食べ飽きたカリカリにふりかけをかけてもらえるまで食べずにこちらに視線を送り続けてくるし、もう出かけないといけない3分前に構え構えと言ってくる、といった具合に。「今、こんな態度したら嫌われるかな。」といった、こちらのご機嫌をうかがうようなことを一切しない。猫のそういうところを本当に尊敬している。
 
そんなクールガイを貫く猫だけれど、忙しかった4月、いつも帰宅後ひとまず猫をぎゅうーと抱くと何かが自分の中から抜けていく感覚がしていた。体は疲れていたけれど、それ以外の疲れが猫を介して抜けていくようなそんな感覚で、私はますます猫を尊敬するようになった。
 
冬よりも明らかに春の方がウキウキしている猫を見て、私も季節をちゃんと感じられるような暮らしを守りたいと思った。じゃないと、余白も何も生まれない。もう5月中旬、梅雨が始まるまでの束の間の春を、猫と楽しもうと決めた5月12日のAM。
 
最近読み終えた本
・r4ンb-4-^、m「^/柿内正午
・心が見えてくるまで/早川義夫